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「主体的に学習に取り組む態度」の評価について

以前、「主体的に学習に取り組む態度」をどのように評価するか、という問いに対して自分なりの答えを出そうと、個人研究をしました。それを論文にして、教育委員会に提出したのですが、見事「奨励賞(参加賞)」あくまでも自分なりの答えが出したいという気持ちからの個人研究だったので、賞よりも取り組んだこと自体に価値があると思いました。

 どのような研究かというと、授業中の子どもたちの「主体的に学習に取り組む態度」を「振り返りカード」で評価することができないか、という研究でした。「振り返りカード」というのは、授業のおわりに、子どもたち一人ひとりに短い文章でその時間の学びを振り返って書いてもらい、それをためていくものです。この研究において一番肝心なことは子どもたちが書いた文章から「主体的に学習に取り組む態度」と考えられるものを、どう読み取るかです。「今日の授業は楽しかった」という文章が「学習に対する意欲がある」と見とるか「ただの感想」と見とるかは、評価者が「主体的に学習に取り組む態度」をどのように考えるかによります。

「主体的に学習に取り組む態度」とは何かについて色々な文書で説明されていて、私もある程度目を通しましたが、抽象的なものが大半です。国立教育政策研究所という機関が出している資料の中で「主体的に学習に取り組む態度」について「知識及び技能を習得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりするために,自らの学習状況を把握し,学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら,学ぼうとしている」と説明しています。やはり「主体的に学習に取り組む態度」を評価するには、どこでどのように評価するか、評価者である私自身が考える必要があると考えました。

とはいっても、一人の教師が30人近くの子どもの学びを45分の中で「態度」といった形ないものをすべて観察し分析し評価するのは物理的に不可能だと思います。できれば形に残るもので見取る必要があると考えました。また授業では、子どもたちが話し合ったり、考えたり、作業をしたり、と様々な活動が展開されるので、今回の研究では、授業の中でどこかを切り取り、評価することにしました。結果、授業の最後に書いてもらう「振り返りカード」にしぼって、分析することにしました。

具体的には、数ヶ月間180人近くの子が書いたプリント一枚一枚に目を通して、どんなことを書いているのか、その中から「主体的に学習に取り組む態度」と考えられるのは何か分析し、それをどのように評価するか考えました。1週間に3回授業があれば、180人×3=540回見ることになります。さすがに毎週それをするわけにはいかないので、単元ごととか、余裕のある時間とかそのようにな時に、まとめて目を通していました。

取り組みはじめてから、作業の膨大さだけでなく、「振り返りカード」を分析することの難しさを痛感しました。子どもの書く文章は当たり前ですが、「書く能力」に左右されますし、その時々の「気分」にも左右されます。一行だけ「楽しかった」と書く子・時もあれば「今日の授業は、流れる水のようすを観察して・・・」と具体的に書く子・時もあります。また「友達のノートのまとめ方を参考にして、絵や図を使ってまとめてみた」とか「水溶液には身の回りにどのようなものがあり、実際に調べてみて匂いや色を確かめてみたいと思った」など、「学び方」の振り返りや教科の内容に関する振り返りもあり、どちらを「主体的に学習に学ぶ態度」とするか、どちらも認めるのか、いかに自分の評価基準が曖昧であるかに気づき、その曖昧さを是正して、次の評価基準を決めるということを行いました。

 

私は研究に関して、経験もほとんどない素人です。ただ、この個人研究がただの自己満足に終わらずに、他人に伝えることに価値があるとも考え、教育委員会が募集している論文にまとめて提出することにしました。

 論文に書き、他人に伝えるためには、客観的なデータとそれらの比較分析が必要になるというのは素人なりにも予想はついていました。しかし、具体的にどのように比較分析をすればいいか、調べて勉強する余裕は全くなかったので、ある本を参考に、自分で数値化を行い、比較分析することにしました。しかし、やるとは思っても「態度」といったものを、しかも子どもたちが書いた多種多様な文章を数値化してデータにするというのは、容易ではありません。数値化しだしてから、問題点がたくさん見つかり、最終的に客観的なデータにならない不安を抱えながらも「ひとまずやってみよう」という気持ちでまとめていきました。

結果的に、客観的なデータから結論に至ったという論文にすることはできませんでした。

しかし、「主体的に学習に取り組む態度」を評価するのは「とてつもなく難しい」ということがよくわかりました。いかに自分の行なってきた評価が曖昧だったかということもわかりました。もちろん、一つの教科、一つ観点だけで、きちんと評価しようとすると、ものすごい時間と労力を要するのですから、実際に数教科を指導し、評価する小学校教員には、非現実的なことだし、どこかで「割り切る」必要もあるだろうな、と思いました。そして、「教科の見方・考え方を理解していること」「何を主体的に学習に取り組む態度と考えるか」自分なりに考えておく必要性があるということが、よく分かりました。一つの活動、一つの振り返りカードにしても、教師側の視点次第で、どのようにも評価できると思います。

「分かった」と繰り返し書いていた子が、振り返りを続けているうちに「においがある水溶液があることが分かった」と書くようになっただけでも、とてつもない変化だと思いますが、「ABC」で評価したら「B」にしかならないでしょう。果たしてその評価がその子のためになるのか。「今までは「分かった」しか書いてなかったのが、授業の内容が分かった」と書いていたね。」と評価することが、その子にとってプラスになるのではないか、と思います。

 

さて、長々と書いてきましたが、私はどうやらこのように「研究」することが好きなようです。それも、誰かに頼まれたわけでも、与えられた仕事ではなくても、です。この研究のように、膨大な時間と労力をかけたのは、学生の時以来ですが、それまでも授業中の子どもの様子を観察し、分析し、評価してきたことはかわりなく、それを改めて整理したのが今回の取り組みで「いつか整理してすっきりしたい」というのが、私の欲望の中にあるのではないかと思います。そして現在、私は「研究」の立場にいます。

 

また新たな問いに対して、一人で研究をしています。

もしかしたら、これが私の「主体的に学習に取り組む態度」なのかもしれません。